消してみることで価値が生まれる『世界から猫が消えたなら』【小説おすすめ】
余命あとわずかと宣告された郵便配達員の彼は1日の命と引き換えに、大切なものを消していく。
電話、映画、時計・・・大切なものが失われていく世界のなかで、彼は愛猫とともに、かつての恋人、親友、疎遠になってしまった父の思いに触れていく。
そして最後に彼が見つけたのは亡き母が残したメッセージだった。
「世界から猫が消えたなら」のここが面白い
遺書
世界から、もし猫が突然消えたとしたら。
この世界はどう変化し、僕の人生はどう変わるのだろうか。
世界から、もし僕が突然消えたとしたら。
この世界は何も変わらずに、いつもと同じような明日を迎えるのだろうか。
(出典:『世界から猫が消えたなら』)
こんな文章から物語は始まる。
余命あとわずかの郵便配達員の言葉。
そう、これは彼の遺書なのだ。
消えていく世界
彼は、自らの余命を伸ばすために消すことを決めた。
今日もし、チョコレートが消えたなら
電話が消えたなら
猫が消えたなら
そして、僕が消えたなら。
世界はどう変化し、人は何を得て何を失うのか。
いろいろなものを消して行く中で、彼は世の中の本当の価値を見つけ出していくことになる。
亡き母からのメッセージ
彼は、余命を宣告された時に”死ぬまでしたい10のこと”を考えた。
そして亡くなった母から手紙が届いた時、彼は拍子抜けする。
「親子でおんなじことしてら」
笑いながら読み進めていった時、彼は何かが違うと気付いた。
それは母の”死ぬまでにしたい10のこと”は自分と同じようなリストでは無かったからだ。
その意味を知った時、数々の思い出が走馬灯のように駆け巡る。
「何かを得るためには、何かを失わなくてはね」
母がよく言っていたこの言葉が蘇ってくる。
終わりに
というわけで「世界から猫が消えたならを」紹介した。
余命あとわずかの郵便局員が自分の生きた意味を探していく物語。
かつての人たちと出会い、たくさんのものを消して行く。
そして、「それは世の中に本当に必要なのか」と考えさせられる小説である。