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相手の行動が予測できるゲーム理論とは何か

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「上司と部下の人間関係」、「企業間での競争」、「政治のかけひき」。ゲーム理論では、あらゆる問題をひとつの「ゲーム」ととらえます。起こっている問題がどのような構造になっていて、どんなルールに支配されているかを考える際、その全体像を「ゲーム」と呼んでいるのです。あらゆる問題を「ゲーム」として見ることができれば、「ゲームの構造(問題の本質)」を俯瞰的に見ることができ、より質の高い思考を行なうことができます。本書の目的は、ゲーム理論の代表的なゲームを学びながら、その「戦略的思考」を身につけることにあります。

ゲーム理論とは、「2人以上のプレイヤーの意思決定・行動を分析する理論」です。ここでいう「プレイヤー」とは、人間だけではありません。企業、国家などさまざまな「意思決定を行なう主体」を指し、幅広い応用が可能です。

「相手がとるだろう選択肢」がわかると、自ずと自分にとってベストな行動が見えてくるという仕組みです。  もちろん、実際の現場では、さらに別の選択肢を考えることもできます。  上司が拒否する理由を予想し、「その理由をなくすためのアクションを起こす」とか、「中間的な別の条件を提示する」など、方法はさまざまです。

ゲーム理論の入門書として有名な戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法の冒頭には「戦略的思考とは、相手がこちらを出し抜こうとしているのを承知したうえで、さらにその上をいく技である」と書かれています。  本書でも、ゲーム理論の基礎を説明するにあたって、「どのように相手に勝つか」「いかにして自分の利益を守るか」をベースに考える場面は何度も登場します。  しかし、実際の(より実社会に即した)ゲーム理論とは、単純に「相手に勝つ」ことだけを目的とはしません。

自分の立場、あるいは相手の立場に立って、適切に利害損得、好き嫌いを数字で表すことが必要なのです。正確な数字がわからなくても心配いりません。起こりうる全ての事態の優劣がハッキリわかれば十分です。

ナッシュ均衡とは、簡単にいうと「お互いに相手の戦略に対して最良の行動をとり合っている状態」です(囚人のジレンマでいえば、お互いが「自白する」という状態)。  ノーベル経済学賞を受賞したジョン・フォーブズ・ナッシュというアメリカの数学者が提唱したために「ナッシュ均衡」と名づけられました。ちなみに、映画『ビューティフルマインド』は彼の波乱の人生を映画化したものです。

試みがうまくいかないのは、ルールに実効性がなく、ゲームのジレンマ構造が解消されていない証拠です。  環境問題や就職活動の問題、あるいはその他のさまざまな問題においても、人々の道徳心に訴えるだけでは真の解決につながりません。  有効な形でゲームのルールを変え、人々の行動を変えていく。

特別な理由はないが、みんなが同じ選択をすることによって、お互いの利益が守られる。  これがコーディネーション・ゲームの基本構造です。  話を簡単にして2人の消費者(Aとその友人)の選択を考えると、コーディネーション・ゲームの構造はより明らかになります。

たまたま誰かが(あるいは社会が)一方を選択したために、残りの人たちがこぞって同じ選択肢をとる。これがコーディネーション・ゲームの特徴です。  携帯電話とPHS、ウィンドウズとマックなど製品規格を選択するケースでは、とてもよく見られるゲーム構造です。

コーディネーション・ゲームには「安定すると変えにくい」という性質があるため、気をつけないと時代の変化にとり残される危険性があります。  残業が当たり前という風土を持っていたり、たくさんの人のハンコがないと前に進まない稟議システムなど、現代的なビジネススタイルにそぐわないやり方をいつまでも続けている会社は要注意です。  現代は変化の時代です。

バックワード・インダクションとは、最後に意思決定をする人から順番に最適な行動を選び、最適でない選択肢を消していく方法です。  参入ゲームでは、B工場が「参入するか、しないか」を最初に意思決定して、次にA工場が「戦うか、融和するか」を決めます。  バックワード・インダクションでは、最後に意思決定をするA工場から考え始めます。